日本語の語尾「のよ」の使い方

そこらの日本語教師にも解けない超激ムズ問題集』という挑発的なタイトルで、20問ぐらい書き並べたページを作ってみた。
このうち第2問は「のよ」に関係する問題だが、「の」という語尾に対して終助詞の固定観念を持っていたり、助動詞「だ」の扱いを軽く考えていると、これは絶対に解けない。

というわけでね…「のよ」という文末表現は、文法の理解が進んでいないうちに手を出すとミスリードを引き起こしやすい厄介な物だ。
ネイティブ流の使い方は本サイトでできる限り解説したいが、初級レベルのきれいな日本語を覚えようという段階ではなるべく使用を避けていただくことが望ましい。

君は「〜のよ」を使いこなせるか

ぼーっと生きてきた日本人の皆さん、今後のために「〜んだよ」と「〜のよ」は同じだと考えない方がいい。
文法レベルで大きく異なるからだ。
「のよ」は、習得するまでにいくつかの段階を踏まねばならず、数ある語尾表現の中でも特に難易度が高い。

レベル1 終助詞と間投助詞の違いを知る
レベル2 「〜んだ。」と「〜の。」の違いを知る
レベル3 間投助詞「よ」の使い方を知る
レベル4 「〜の」で打ち切った文節に間投助詞「よ」をつなげる

この辺りは、いわゆる標準語の中ではぞんざいな扱いになっており、きちんと教えられる人もほとんどいない。
しかし古来の日本語ではとってもデリケートな部分なので、知っておくと誰よりもキレイな文章を書けるようになる。

チコ「あたし、時々『のよ』って言ってるじゃんか?」
馬野骨夜「はい。」
チコ「『のよ』の意味を説明できる?」
馬野骨夜「えーっと、女性らしさを強調してる?」
チコ「どんな女性?」
馬野骨夜「……色気があって、時に頼れる存在…みたいな。」
チコ「ボーっと生きてんじゃねーよ!」

おっさんがよく使うのよね

超リアル文例



あのルパン三世や寅さんも所々で取り入れている言い回しで「ここはしっかり聞いとけよ」という場面で出てくる。
ぶっちゃけ、リアルの会話でも耳にするので、いつまでも「役割語」扱いはできないなぁと思っている。
ちなみに先程の文例はほとんど男性の会話から拾って来ている。

前提として 〜の。 という語尾の使い方を正確に知っておく必要がある。
「女は語尾を『の』にしとけばいい」という乱暴な教え方が横行しており、きちんと場面に応じた使い方を説明しているのは、奇しくもウチのサイトをおいて他に無い。
そこに、おまけとしてツッコミ専用語である間投助詞 〜よ。 を添えれば完成。
要するに、単にこの2つが並んだだけの物であり、「の」と「よ」は分解して考えた方が良い。

「のよ」はリアルで聞く場合は100%批判的発言であり、「強めに非難する・指摘する・ダメ出し・激しく同意」となる。
甘く優しい口調で「のよ」が使われた実例は、今のところ確認できていない。
「の!」を使うと説教しているような感じになる事は、語尾「〜の」の解説ページで説明している。
「よ」を付ける事で更にそれが明確に表れている。
朝のラジオ番組を聴いていると、出演者が「そうなのよー」とかよく言っているが、討論なんかではちょいちょい耳にする機会はあるだろう。



「のよ」を「のさ」と言い換えてもほぼ同じ意味になる。
岡山や広島などの方言「〜んよ」も同じく間投助詞のツッコミ表現だろうと思われる。


「なんちゃって」な使用例




使い分けをすごく大雑把に言うと、言葉の詰まった袋を普通に手渡す時は「んだよ」。
後で忘れ物に気づいて投げてよこすのは「のよ」。

いずれにせよ、親が子にやさしく「こうするんだよ」と言う時も、反抗期の子が「うっせえんだよ」と言う時も「んだよ」になるのが普通だ。
終助詞としては「〜んだよ。」の方が文法的に正しいから。
英文和訳をする時も普通は「のよ」なんて使う理由がない。「y'know」みたいなスラングの間投詞が出てきて初めて使う理由が出て来る。

さらに細かいことを言うと「〜のよ。」と言った時の「よ」は間投助詞なので、言葉を補う用法に限定される。
文節のあとにつなげる間投助詞「よ」は別のページでも解説しているけど、自然と使いこなすのが難しい代物なので、無理して使う物ではない。
(もちろん、述語終止形のあとにつなげる終助詞「よ」の使い方は、しっかりと確認するべき)

役者の声色にだまされちゃダメよ!!

「のよ」という語尾を乱用する人はだいたい己の文才を鼻にかけてる人だったりするので、正直あんまり良い印象が無い。
これが特に優しい言葉だとは私は思えないのだが、ここがテレビの影響力の恐ろしさで…
役者がピンクな声で「のよ〜♥」を連発してみせるから、優しいママが使う言葉だという誤解が広がっている。
ただ、皆さんがそれを真似しても絶対に優しい言葉にはならないのでね…。
なんなら壇蜜さんの優艶な声色で「タラタラしてんじゃねーよ」をテレビで流し続けてみるといい。
いずれは模範的な女言葉として認識されるようになる。これ、冗談抜き。

子どもに言葉を教える段階でみだりに「だ抜き言葉」を乱用すべきでないという理由からも、ウチの教育方針としては、ボケツッコミ以外で子ども相手に「〜のよ」という言葉遣いは適切でないと考えている。
そもそもの話として、親子の言葉遣いに文法レベルの違いがあるなんて事は生態学的に不自然なんだよね。
たとえば母親が「わかったわね?」と言えば、男の子は当然「わかったわよ!」と答えるもんだろうと…。
その点、いつぞやのポノック短編劇場に面白い場面があり、東京の言葉を覚えてきた息子に対して、大阪育ちの母親は「あ?」とか思うわけである。
外へ出るようになると違った言葉を覚える事は大いにあるけど、いずれにしたって文法規則は親の言葉遣いをそっくりそのまま受け継ぐのが普通だよね。

秘密の呼応表現

ぞ〜うさん ぞ〜うさん お鼻が長いのね
そ〜うよ かあさんは 長いのよ〜

「どこ行くの?」「海行くの。」というような感じに、「〜の?」で質問されたら「〜の!」で返すという、いわば2人プレイの呼応表現ってヤツだ。
わらべ歌に出てくる象さんの歌を眺めながら、意外にシンメトリックな形をしているなあ…と。
女性限定だとかいう意地悪なことはウチのサイトでは言わないので(笑)、父ちゃんとの間でもやってみてくれて構わない。

「〜んだ。」と「〜の。」のニュアンスは別のページで説明してあるので、基本的にはその使い分け方を手掛かりにして解釈してほしい。
「の」という言葉を発したのに釣られて「のよ」「のね」「のよね」と続く場合もある…と、そんな所だ。
▲トップに戻る▲