終助詞「よ」の使い方 / 日本語の語尾

「〜よ」の使い方だよ。

この語尾表現は、自分の意見を相手に投げつけ、軽く誘ったり忠告したり、注意を引く時などに使う言い回しだよ。
従って「よ」を使う時は自分自身の主張を発言しているのであり、また、必ず誰かしら話し相手を想定している(広告の場合はお客さんとか)。
イラストで表現すると、相手に狙いを定めて矢印をブスッと刺すイメージだ。

丁寧語のですます調と比べたらフランクな印象があるだろうけれど、私の考えとしては「語気を和らげる」という説明はしにくいと思っている。
この語尾に限っては例外的に命令文に付けられるが、「命令形+よ」の組み合わせはなかなかダメージが大きいよ。

「〜よ。」を使って柔らかく聞こえるかキツく聞こえるかは、文脈の方に依存する。
ほめる言葉であれば「愛の弓」であろうし、そしる言葉であればグサッと刺さる。
単なる説明で使えば「親切に教えてくれてありがとう」ぐらいな印象だろう。
これから出て来るどんな語尾もそうだけど「やさしい口調、強い口調」という決まりがあるわけじゃないので、それよりも意味の方を気にしてほしい。

「よ」の文例

よく似た言い回しとしては「〜から。」という語尾表現もある。それについては別のページで紹介しよう。

終助詞「よ」の使い所

終助詞は単にキャラやムードを添えるための飾りではないので、特に「あなたに対して教えている」という意味を含まない限り「よ」という語尾は必要ない。
和訳をする時にやたらめったら語尾をつけたがる人がいるが、必要以上に「よ」を付けるとラップバトルの「YO!YO!」と同じになってしまう。
基本的に終助詞なんか要らない物だと思った方が、落ち着きのある作文をしやすいだろう。

「よ」が必要ない例

「よ」が必要ある例

「〜て」「〜から」の説明ページでも触れるが、質問・回答など話者の交代が起こる箇所以外ではあんまり終止形・終助詞で締めることは多くないので、そこも意識しておくといい。

「よ」という語尾が全く必要ない場合としては、ただ「はい」とだけ答えれば十分な時、特に伝えるべき内容を含まない答えをする時。
例えば「わかった。」「わかりました。」などの返事に、これ以上注意を引く単語をくっつける必要はない。

3つの文末イントネーション

日本語には3種類の文末イントネーションがある。
終助詞「よ」にも3通り全てのイントネーションが有り得る。 (俳優のしゃべり方を聞いていると上昇調や下降調のイントネーションもあるが、これらは言語外要因なので割愛させていただく)

文末の「よ」が低い音

文末の「よ」が高い音

文末の「よ」が疑問イントネーション

ゆるい小説などで、疑問文じゃないのにクエスチョンマークが付いてることがよくある。
これは尻上がりに読んでほしいことを表している。
そうすることで英語の付加疑問みたいに「そう思うでしょ?」とか「OK?」みたいなニュアンスを与えている。
ただ、イントネーションがどうだろうと語尾の「よ」の意味それ自体は変化しないはず。

終助詞「よ」の文法

終助詞は原則として、終止形の述語の後にしか付けられない。
ここでいう終止形とは、否定の「〜ない」および過去形の「〜た」も含む。
また、3つの終助詞「よ」「ね」「か」以外では、未然形+助動詞「う」の後につなげる用例はかなり少ない。
特に、命令形・禁止形との接続が可能なのはただひとつ「よ」だけだ。

終助詞「よ」と接続できる物

「あるだろうよ」みたいな推量表現の後に付けるのは old-fashioned であり、また、これ以外の文末にはあんまり好んで「よ」を付けることは無い。

「よ」や「ね」といった語尾を使う場合、「動詞+よ」「形容詞+よ」「名詞+だよ」というようにする。
終助詞は必ず述語文の後につなげる物だが、名詞は単独では述語文にできないため「だ」を付ける必要がある。
「だ」を付けずに直接「名詞+よ」とつなげるのは終助詞としては文法違反だが、後で述べる間投助詞だとみなして言い逃れる事も可能ではある。

述語に関する文法的整合性

疑問詞疑問文のあとに付ける「よ」

疑問文での例外的な使い方

疑問文に付ける終助詞は「か」だけであり、それ以外の終助詞を使って疑問文を作ることはできない。
したがって「ね」「な」「ぞ」「ぜ」「わ」といった語尾を疑問詞疑問文に付けることもできない。
ただし一部の例外として「なに」「なんで」などの疑問詞を含む文章に「よ」を付けることがある。
平叙文ではなく疑問文に「〜よ?」をくっつけると、ほとんどの場合は苛立ちのニュアンスになるらしい。

相手に対して「What?」という例

疑問詞疑問文で終助詞「よ」を使う例

「なによ?」については後で述べる間投助詞的表現であり、終助詞の形をとる「なんだよ?」とは同じニュアンスにはならない。

あくまでも例外である

実は疑問文で「〜よ?」を使う例というのは、「だ体」の名詞述語文しかない。

使用例の見つからない疑問文

こういった文章が文法上誤りだとは言いにくいし、下品かどうかも分からない。
ただ単純に、実例が極めて少ないという話だ。
ある漫画家が著作権法改正案について「誰が頼んだよ、こんなの」と批判していたのを見たことはあるが、それでもやはり非標準的な印象は有るらしい。

以上が「よ」の基本的なニュアンス。
「どちらが女性的か男性的か」という事が語られがちだが、そのようなキャライメージだけで論じるのは学問としては幼稚だ。
イントネーションの違いやら何やらをいくら頑張って調べようが、ひとつ「反証」をあげればすぐ崩れるので、「この話し方は女だよ男だよ」という説明に労力を割くのはやめよう。
ウチのサイトでは基本的に、「終助詞」と「間投助詞」の違いなどクソ真面目に文法的観点を取り入れていきたい。
文法というのはネイティブにとっておしゃべりしやすいパターンだから、何事においても文法が第一なんだよ。

【おまけ】断る時に使う「いいよ」

相手の厚意をやんわりと断る時に「もう十分です、間に合ってます、だいじょうぶです、I'm all right」と言う事それ自体はほぼ世界共通。
ところで日本語の形容詞「いい」には「good」と「all right」の2つの意味がある。
そのため、断るつもりで「いいです」と言ったら相手は good の意味に吊られてYESと解釈してしまうなど、混乱の生じる事が時々あるようだ。
もっとハッキリとした言葉を使うのも立派な配慮だけど、このように少しぐらい厄介な慣用表現があったとしても、私から見たらそれは「語学あるある」の一種にすぎない。
それを恥ずかしく思ったり誇らしく思ったりする事はない。

YESの意味で使う例

NOの意味で使う例

以上の2つの例はどちらも all right の意味で使っている。
ここで語尾が尻上がりだとYESの意味に、尻下がりだとNOの意味になりやすいらしい。
ただしこのようなアクセントの使い分け問題が起きるのは「いい(です)よ」という慣用句に限られるので、終助詞「よ」の話とは区別しておこう。
NOの意味として解釈され得るのは、勧誘表現や「何々してあげるよ」など、あくまでも自分が利益を受ける事に対して「いい」と答えた場合だけ。
その他の依頼表現や許可を求める表現に対して「いい」と答えた場合はYESの意味でしか解釈できない。


<注意>
終助詞「よ」の説明は以上でおしまい。
ここから下は「間投助詞」としての「よ」の使い方についてグダグダと語る。
使用頻度的な意味から、これより先は読まなくてもいい内容になっているが、
「結果このザマよ!」「好きよ!」とか、ちょっと文法的に危うい言葉遣いが気になっている方は読んでみるといいだろう。


間投助詞を使う上での注意

中途半端に途切れた文の後に「よ」「ね」などの助詞をくっつけるのは「間投助詞」的な用法。
くだけた会話表現として例外的に認められている物で、きちんとした述語の形で終わっていないため文法的に許せるのかどうかは微妙なところである。
ある条件下ではリアルでも「だ抜き」は起こり得るが、慣れないうちは無理に使わないように。

「だ」を外せば lady らしい口調になるというとんでもない誤解が広まっていて、頭を痛めている。
現実の lady がそんな話し方をしないのには根拠があって、「だ」を外したらただ文法を破壊しているだけで、みっともないからだね。
本当の淑女なら敬語でしゃべれよ…とも思うが、タメグチの範囲内では「ママよ」よりも「ママだよ」の方が丁寧な言葉だから、今後気を付けてもらうと良い。
文法をナメきってるヤツは決して大和撫子にはなれない。


他のページでも注意を入れているが、日常会話における間投助詞は「補足」のためにしか使わない。
何かに付随する発言ではなく、単体の独立した発言にしたければ必ず終助詞の方を使う。
従って「ママだよ」は「ママだよ」以外の何物でもないので、うっかり安心して付いて行ってしまいそうである。
逆に「ママよ」と言ってきた場合は気をつけよう。絶対に何事かあるから、うん、気をつけとけよ。

間投助詞「よ」の使い方

およそ人間のしゃべる言葉には「話し言葉」「書き言葉」のほかに「歌でしか使わない言葉」というカテゴリーがある。
「名詞 + よ」あるいは「文節 + よ」など、述語文として不完全な文章にくっつけるのは「間投助詞」という扱いになる。
この間投助詞の「よ」は基本的に歌の中での呼びかけ表現として用いる。

北斗の拳に登場する男ジュウザの台詞「雲ゆえの気まぐれよ」

間投助詞の「よ」の文例1(よびかけ表現)

間投助詞の「よ」の文例2(断定表現)

間投助詞の「よ」は日常会話では非常に稀であるが、千葉県浦安市の海岸沿いの一部では方言として活用されているようだ。

実用会話としての、間投助詞「よ」の正しい使い方

ポエム以外の用法としては、なかなかまとまらない会話にケリを入れたり、ズバリ一言で言ってやる時の言い回しがある。
「ソードマスターヤマト」の最終回(笑)みたいに四天王をまとめてやっつけるイメージであり、押しが強い。
お互いに間投助詞である「〜よ。」と「〜さ。」は置き換え可能なことも多い(詠嘆か断定かというニュアンスの違いは多少ある)。

だ抜きの「ね」がよく使われるのと対照的に、だ抜きの「よ」はほぼ使われない。
トークバトルでもない限りは、日常的に使う必要性があんまり無いからだ。
ともあれ、生身の日本人の会話から「名詞+よ」の使用例をそこそこ見つけることは可能。

この場合は、一言で締めくくる断定表現、ワンポイントで言ってのける表現として不自然はないのでOKだろう。
問題は次のような場合だ。
名前を教えてあげる程度の場面で用いるような表現ではない。
ネイティブとしては「名前は何々だよ」という言い方で慣れているはずなので、いたずらに「だ」を外されると聞き取りづらくなる。
私が採点者ならここで減点する。

そして絶対に有り得ないのは次のような場合だ。
伝聞表現の「〜そうだ」「〜ようだ」は書き言葉なので、まじめな部類の言葉だ。
一方、ポエム以外で間投助詞「よ」を使うのは俗語の中の俗語で、あらたまった場面には向かない。
互いに相性の悪いformalとslangとを混ぜて使うなど、到底考えられない。

普通の質問「これ、いくら?」
普通の回答「100円だよ。」
ボケる「はいどうぞ。真ん中に穴開いてるけど。」
ツッコミ「100円よ、100円。」
こんなふうに使い分けられると、うまい。

親子会話に見られる間投助詞「よ」

たまに、ちっちゃい子などに対して「ダメよ!」「だいじょぶよ!」「ごはんよ!」という表現も見られることがある。
これは短い一言で呼びかけて簡単に念押しをするという、間投助詞の使い方に準じる物である。
名詞述語文で自由に「だ」を省略しているわけでない事に注意しなくてはならない。
質問に答える時は通常「何か呼んだ?」「ごはんだよ。」のように、終助詞として間違いのない形にする。
待合室にいた親子の会話とかからサンプリングした結果を念のために言うけど、これに関して性別は無関係だ。

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