日本語の語尾「かな」「だろう」の使い方

【参考】推量の「でしょう」に関する一考察

話し言葉での推量表現の現状はどうだろう…

本来「〜と思う。」は1人称で "I think" の意味を持つ言葉だが、日常会話では推量表現としても使われる。
推量表現の文末「〜だろう。」「〜でしょう。」は書き言葉としての性格が強くなっているため、丁寧語を含めた話し言葉では「思う」という動詞を用いて表すぐらいが一般的である。

文例


ただし文末ではなく文中では「〜だろう〜」「〜でしょう〜」という言い回しも普通に見られる。
会話でも「〜だろうけど。」は普通に使うが「只今考え中です」という印象がある。
「〜と思うけど。」の方が、より相手に話しかけるニュアンスがある。

文例


「だろうね」「でしょうね」は助詞「ね」の応用表現なので、言葉を補い足すようなニュアンスを持っている。

くだけた言葉であっても「〜だろう。」という文末で締める対話文はほとんど出て来ないが、一方、独り言・自問自答のような場面になるとよく出て来たりする。

文例

なぜかタメグチが「でしょ」になる現象については若干ややこしいので、より詳しくは 独白体 のページで説明させてほしい。

特に次のような「疑問詞を含む名詞節+だろう」は、基本的には自問自答のニュアンスだが対話の中でもよく使われる。

よくある文例



日本語で「マヨネーズは嫌いだけど」と言った時、主語を特定できる物がなければデフォルトで1人称になりやすい。
一方「マヨネーズは嫌いだろうけど」などの推量表現ではデフォルト2人称になりやすい。

「〜かな」はこう使えばいいかな。

推測を表す表現としては文法的に「〜だろう」が用意されているが、他にも疑問の「か」と独言の「な」の組み合わせで生まれた表現がある。
「かな」は、自問自答しながら判断を迷う表現だ。
なお、この手の表現は外国語でも一般的なので、ただの疑問文に訳してしまうのは安直かなと思う。

「〜かな。」「〜だろう。」は微妙に似ているため、ここで両方比べてみたい。
簡単に言ってしまうと「かな」は確信度50%で、どっちにしようか迷っている状態。
「だろう」は確信度80%ぐらいで、答えには近づいているけど断定には至らない状態。

(ちなみにここで言う確信度とは、0%なら可能性ゼロだと感じること。
実際のところは文脈にもよるので、確信度の表現は誤解を招いてあんまり良くなかったかな…。
「〜かも。」と言った場合は「間違っていたらどうしよう」という心配事が必ず含まれるので、それと比べたら「〜かな。」の方が確信度に期待できる余地はある。)

「かな」と「だろう」の推量表現

疑問詞および「の」のコンビネーションになると、ほぼ「分かりません」に等しい発言になる。
「〜かな」はくだけた口語表現である……と同時に文末だけで使う表現なので、文中では「だろう(でしょう)」の一択になる。
もちろん直接話法には文末があるので「〜かなと思う」のような文章は作ることができる。

「かな」みたいな婉曲表現を良しとしない論調もあるらしいけど、地球上の人間はだいたいみんなそういう話し方だし、予知能力でも持ってない限りやたら断定的な言い方はできないので、そこは察してあげてほしい。

どうでしょう?

「だろう」「でしょう」を相手への質問に使う場合は、さきほどの推量表現とはニュアンスが異なる。
〜よね。 / 〜でしょ。 / 〜じゃん。 のページで説明しているような確認表現になる。

話し相手に対する確認表現

このような場面で使われる「だろう」「でしょう」は具体的事実について確認する物であるから、疑問詞疑問文に使うことはできない。

これは推量表現とは別物でしょうか?

へりくだった質問や依頼をおこなう時の言い回しとして「〜でしょうか」が用意されている。
丁寧語の形しかなく必ず「動詞文の終止形+でしょうか」「形容詞文の終止形+でしょうか」「名詞+でしょうか」という形で使う。
さきほどの推量表現や確認表現とは関係なく独立して扱った方がよいだろう。

謙遜した言い回し

丁寧語では必ず付けることとされる終助詞「か」が欠落して「何でしょう?」みたいに言うこともあるが、
それについては 〜です。 / 〜ます。 のページでもちょっと解説する。

どんな使い方ができるかな?

「かな」は確信度がちょうど半分の50%であることから、次のような使い回しもできる。
これは「かな」という語尾表現に特有のニュアンスであり「だろう」「かしら」などと置き換えることはできないが、書き言葉の「だろうか」はほぼ近いニュアンスがある。
丁寧語では「ですかね」が相当する。

「かな」の応用表現



推量の表現は、書き言葉や独白のセリフでは「だろう」「でしょう」でOK。
そうでなければ「いかにも翻訳調」になりがちな部分なので、もうちょっと考える必要がある。
例)You will want to do this.
あなたはこのようにやりたいでしょう。 → こうやりたいかと思います。
「あなた」って言葉も日本語ではくどいから、適当な語尾表現に置き換えたほうがいいかもしれない。
例)You look well.
あなたは元気そうだ。 → 元気そうだね。

文法について

「海賊王になろう」は動詞をそのまま未然形にした物で、未来意志または勧誘の意味になる。
「海賊王になるだろう」は終止形接続の助動詞「だ」の未然形を付けた物で、推量の意味になる。
このように現代語では「意志」と「推量」とで形を区別している。
しかし古くはどちらも区別がなかったようであり、宮崎駿の昔描いた長編漫画では「何々になろう」が推量の意味で使われている。

推量表現の使い分け問題

どんな紆余曲折があったのか、「です」を「だ」に変えればパンマルになるという理屈の通らない部分がある。
また、SNSを中心に「かしら」が市民権を得てきたり、この辺りは引き続き研究が必要だ。
下の表はまだまだ独自研究の状態なので、さらっと見るだけにしといてね。
書き言葉丁寧語独り言話し言葉
文中において〜であろう〜〜でしょう〜〜だろう〜〜だろう〜
強い確信〜ではないか。〜じゃないですか。〜じゃん。〜じゃん。
ほぼ確信〜だろう。〜でしょう。〜だろ。〜でしょ。
半分の確信〜だろうか。〜ですかね。〜かな。〜かな。
弱い確信〜と思われる。〜かもしれません。〜かも(しれない)。〜かも。
Yesの確認〜かしら。〜でしょう?〜だろ?〜でしょ?
是非の確認〜か否か。〜ですよね?〜よな?〜よね?
謙遜した依頼〜かしら?〜でしょうか?--
文末表現は色々あるけど、文中の場合は「だろう」「でしょう」のどっちかだから単純。
このうち「Would you ... ?」にあたるへりくだった依頼表現として使えるのは「〜でしょうか?」だけで、「〜でしょう?」や「〜だろうか?」では代用できない。



▲トップに戻る▲