「女性は命令形を使わない」説を徹底論破 - 日本語命令形の素顔


日本語で「女性は命令形を使わない(もしくは使える場面が制限される)」とする都市伝説がウワサされており、なんと日本語の教科書ですらそのように教えているというから驚きだ。
が、あらかじめ単刀直入に言う。『事実無根』であると。
ネット上のある教材によると女性は「怒っても命令形を使わない」そうだが、そんな女性は二次元でも三次元でも見たことないぞ、どんな世界で生きてるんだ(苦笑)。

これを受けて私は必死で実地調査を行なった。
身の回りの会話を注意して聞き取ったほか、新旧問わず、小説、漫画、アニメ、ドラマ、ゲーム、新聞、雑誌……どこを漁っても女性が命令形の使用を避けている様子は見受けられなかった(キャラ付けされた場合を除けば)。

漫画を見ながら日本語勉強していれば、女の人でも普通に命令形使ってるなあという事はすぐに分かるんだけど、後で教科書から男権社会的な教えを吹き込まれる残念な学習者がいたりする。それは実際にツイッターで見つけたことがある。
こういうのをことわざで「角を矯めて牛を殺す」と言うのかな…?

現実問題として、性別を見分ける記号としてはまったく働いていないので、標準日本語のルールとしても『無効』だと考えている。
おそらく女性に対しても男性に対しても偏見があるだろうと思うので、それを解きほぐしながらの説明をしていきたい。
さて、これから日本語の命令表現に関する本当のことを語ろうと思う。
話を始めるにあたって、ちょっとばかり「いたいのいたいのとんでけ〜」のおまじないを掛けておく。


初級では、まずこれだけ教えるべし

命令形とは…

逆に、絶対にやっちゃいけない例文は「普通に頼み事をするだけ」と「相手が目下という理由だけ」で命令形を使う事。
考え方の古い人は注意してほしいのだが、現代人の感覚としてこの2つは完全にアウトだから、たとえ男性の人物イラストを使ってもバツ印が必要になる。

命令形のおさらい

…というわけで、ここから先の説明はおもいっきり上級者向けになる。
罵倒語としての命令形も、それはもちろん有るからこのページでも触れるけど、みんな、何かもっと大切な事を忘れていないかな〜?

わらべうたの命令形

「このゆびとまれ」という題名で、見た目は可愛いけど中身は強烈な漫画があるらしいねw
では、まず初めに「〜しろ」「〜して」「〜しなさい」の使い分けについて確認しようか。

して

30年間眠り続けて目が覚めたら西暦2017年だったという、そこのおっさん。(たしかそんなテレビドラマあったなぁ)
これから人に命令するときは「〜して」を使ってください。
今の時代、人に物を頼む時は「やって!」というのが普通…いや、本来は昔からそうだったと思う。
「汚い言葉なので注意」するべき所でしばしば「主に男性が使う」という説明があてられ、「男だったらどんな乱暴を働いてもいいのか、というかそういう男が好みなのか」と首を傾げてきた。
いわば、「男性は赤信号でも渡る」と教えているに等しい、危ない教本である。
命令形を男性語として覚えてしまった方がもしいたら…それは今すぐ忘れてください。
中南米のマチスモ(男性優位主義)には驚いたが、日本にはそれを許容する空気はもはや無いので気をつけよう。
命令形で物を頼む男性は100%嫌われる。

基本的に「〜して」という表現は、相手のためではなく自分のためのお願い事として使う。「してください」の略だから。
そこから転じて「私の意見としては」と譲歩して命令口調を和らげたり、
さらに転じて「そうなると私もうれしいです」と、親しみや思いやりを込めた言い回しになる。
ただ、自分のためのお願い事である以上、場合によってはわがままのように聞こえる。
なお、この言葉は「さあやってごらん」の省略形で勧誘表現として受け取られる場合もある。

ちなみに、「〜して」という表現しか使えない場合も存在する。
「助けて!」「つれてって!」などだ。なぜなら目的語が me だからである。
「助けろ」「つれてけ」のような言い方をすると "You must..." みたいな感じになり、かなりニュアンスが違う。


『進撃の巨人』でライナーが何回か発する台詞「待って…」。
命令形「待て」ではなく「待って」という文体を用いているのはなぜか。
これは日本語の命令表現について考える上で、非常に素晴らしい教材になるね。

しろ

乱暴で汚いスラングのように言われがちだが、そのように決めつけてしまうのは早とちり。
なんとなく命令形を日常会話で使いづらいのは、そもそも日本語の命令形は文語体だから。
ちなみに、一般的に「文語体」と言うと明治憲法みたいな古語を指すらしいのだが、この際、現代語の命令形も文語体呼ばわりさせていただく。その方がかえって誤解を招かない。
文法として「命令形」はあるから授業では習うけど「使っちゃダメ」だと教わって、さぞや腑に落ちないだろうなあ。
まあ、フランス語の単純過去形みたいに、日本語の命令形は書き言葉の範疇に追いやられてしまっているわけでね…。
もちろんネイティブスピーカーにとっては大事な表現なので、このページでは使い方をしっかり確認する。

この表現は、自分のためではなく、相手のためを考えて、周りの状況の事を考えて命令する場合に使う。
相手のためというのは、相手の非を追及する事も含む。
ここで「〜して」と「〜しろ」の使い分け問題が生じてくる。
もっとも「あなたのためを思って注意しているんですよ」とか言われて反感を覚えない人は、たぶんいないだろうと思う。
私もこういう言い方をされると腹が立つし、だから必要以上に人に対して「〜しろ」「〜やれ」というのは避けた方がいい。

逆に言うと、相手が目の前にいない時や、相手が人でなく物や状況である場合は、けっこうみんな気楽に使っていたりする。
物に八つ当たりしたり、困難な状況に立たされている時、こういう時はむしろ「〜して」みたいなお願いする言葉遣いは不自然に聞こえる。
また「〜するべきだ」とほぼ同じで、特定の誰かに対する物でない客観性を持たせる働きも重要だ。
掛け声・スローガン・ことわざ・おまじない・ギャグ・漫才のツッコミでは命令形・禁止形が必須であり、それを封じられてしまう事はネイティブにとっては致命的。
「エースをねらえ」「それいけ!アンパンマン」「響け!ユーフォニアム」「ウォーリーを探せ」「あつまれ どうぶつの森」など作品名にはよく命令形が出てくる。
クレヨンしんちゃんみたいなギャグ漫画では女性も平然と命令形でつっこんでくる。

「女の子がそんな汚い言葉使っちゃいけません」だなんて今はもうほとんど聞かないが、昔そう言ってた連中も、別に具体的な禁止ワードを決めてたわけじゃないしね。
だから、ストレートに「女は命令形を使わないもんだ」といった意識は民間レベルでは存在しない。
『みんなの日本語』の著者が個人的趣味でそういう事を書いてしまい、それを無批判に丸写しして広まった物だろうと思われる。こういう事もあるので、データに基づかない感想を教科書に載せちゃダメだね。

興味深いのは伝聞表現・間接話法の中に命令表現が現れる場合。
たとえ改まった丁寧語であっても「〜しろと、」という形を使う傾向が強いことだ。個人的にこれは韓国語の「〜하라고」をすごく思い出す。

しなさい

そして、感情を抜きにした言い回しとして「〜なさい」という命令表現も代表的だ。
これは自分のためのお願い事としては絶対に使わないので注意してほしい。
現代日本語には「目下に対する言葉遣い」という物は基本的に存在せず、あったとしてもこの「なさい」という言葉ぐらいである。
親が子供に、教師が生徒に、上司が部下に、というように指導する立場にいる人が主に用いる言葉である。
他には数学のテスト問題で「計算しなさい」とか、コンピュータに「この計算をしなさいという信号を送る」みたいな使い方がある。
この言葉遣いで命令された人は、とりあえず言われた通りに淡々と任務を執り行うだろう。
言われた側がどんな気持ちになるかは、まったくもって状況次第だ。


アニメ「サザエさん」の波平は「カツオ、わしの名前を言ってみなさい」という言葉遣いだ。
「〜しろ」という形の命令はしばしば目下に対する言葉として説明されるが、実は、あからさまに目下を目下と扱うような言葉遣いは現代語からは消失している。
目上に対する敬語表現のルールはあるが、同じ人間どうしである目下に対しても一定の敬意を払う。
だから「〜なさい」という言葉になる。

タメグチで「〜しなさい」は非常に大げさなので、そういう時は縮めて言う。
「〜しな」という縮約形にすると、お友達どうしのくだけた会話でも使えるようになるし、親子会話で使っても問題ない。
また、「〜しろ」に比べるとあまり緊迫感を与えない傾向にあり、そんなに急いでやらなくても良い事でよく使われる。

ところがね、この「連用形+な」という命令表現を「ドラマでギャングが使う行儀の悪い話し方」なんて言う人がいて「ちょっと、庶民の言葉を知らないにも程があるだろー」と驚いてしまった。
やっぱり小説のイメージだけで考えちゃダメだね。
下品なドラマばっかり見ていると下品な言葉として"刷り込み(imprinting)"されてしまうからね…。
私の実地調査では、命令というよりは忠告をするぐらいの、当たり障りない注意表現だった。

ヒンディー語(ウルドゥー語)の2人称単数もかなり使う場面が限定的だと言われ、「宗教儀式でしか使わない」「ケンカする時ぐらいしか使わない」「家族どうし等、よほど近い関係なら使う」など色々な情報が飛び交っている。真相は現地で確かめるしかあるまい。

禁止形の作り方

普段の会話で使うには長すぎる等の事情で、教科書で教えているような単純な理屈は通らない。
その点も含めて、どのWebサイトよりも丁寧に解説しよう!

「〜して。」の禁止表現は「〜しないで。」となる。
しかし「〜しないで」は少し長い言い方なので、「落とさないで。」「落とさないでよ。」「落とさないでね。」みたいな言葉を使うのは比較的ゆっくりと説明してあげる余裕がある時。
急な場面でネイティブがとっさに口に出すのは、まずは「ダメ!」という言葉だ。
「落とす!落とす!」「落ちちゃう!」「落としちゃダメ!」とか、そんな感じになる。

「〜しろ。」の禁止表現は「〜するな。」となる。
この禁止形の「〜するな」についてだが、短くて済むこともあって実は日常的によく使われる。
そもそも禁止表現は攻撃ではなく防御のために使うので、罵倒語になりにくいためだ。
「〜しないで!」「〜しないでよ!」という言い回しには「私の言う通りに動いてくれ」という押し付けがましさを感じさせるリスクもある。

一方、禁止形の「〜な」は客観論なので使い方次第では角立たない言い方ができて、話し上手な女性はその使い所がうまい。
「転ぶなよ」「風邪ひくなよ」という言い回しは、ママが子どもをいたわる時の言葉としては至って普通であるし、相手の身を案じて言えば何ら悪い印象を与えないはずだ。
というか、相手は被害を受けるけど自分は被害を受けない件で「転ばないで」「風邪ひかないで」という表現は使いにくい。

ただし、軽い調子で言うか掛け声のように言う以外では、上から目線になることに注意。
叱責の意味もなく単に自分のために言う場合は「見るな!」よりも「見ちゃダメ!」のほうが無難かもしれない。

「〜しなさい」の禁止表現は「〜しないようにしなさい」もしくは「〜しちゃいけません」など。
しかしこれではあまりに長すぎるという事であれば、単なる否定形にしてしまって良いはず。
「廊下で走らないようにしなさい」はもっと簡単に「廊下で走らない」と言えば良い。

命令文に終助詞「よ」を付ける

語尾の「よ」だけは例外的に、命令形や禁止形の後にくっつけることができる。
終助詞の「よ」に語調を弱める効果は、私は無いと考えている。
ポジティブな念押し・忠告か、ネガティブなわがまま・非難かは文脈依存だが、いずれにしろ語調を強める方向に働くはず。

「命令表現 + よ」の文例

終助詞「よ」は基本的に、あなたに対して伝えている事を示す働きがある。
命令表現はどうせ元々が相手に対する発言だから、ここでは語調を強める効果ぐらいしか無い。
ただし命令形・禁止形については特定の誰かに対する物でない客観論に聞こえる場合もあるため、終助詞「よ」を添えることで「あなたに対して言っているんだよ」という意味をハッキリさせることができる。

語尾の「な」の区別(特にアクセントの問題)

「〜しな」と「〜するな」は両方とも「な」で終わっていて紛らわしいよね。
語尾の「な」は、なんと感嘆・命令・禁止の3通りがある。

命令表現だったら「連用形+な」となるので必ず /ina/ /ena/ という発音になり、明らかだ。
…と思いきや、原形が「る」で終わる五段活用の場合、次のように音便化することがある。
命令の「走りなよ。」が音便化すると「走んなよ。」になる。
(命令表現である場合、活用語尾の「ん」から命令の「な」に至るまで、高い音を保つ)
禁止の「走るなよ。」が音便化すると「走んなよ。」になる。
(活用語尾の「ん」から禁止の「な」の間のどこかで必ず低い音に落ちる
その次の終助詞「よ」は、例えば不満であれば低い音、忠告であれば高い音になったりするだろう)
口でしゃべる場合ならある程度アクセントの違いで区別はつくが、これは文脈で判断するしかない。

さらに厄介な点は、動詞の現在形で「まずそうな顔で食べるな。」と言うと、詠嘆表現と禁止表現の2通りがありえる事だ。
音の高低によるアクセント(pitch accent)で区別できる保証はないが、強弱アクセント(stress accent)での区別は可能かもしれない。
こういう事もあるので、日本語学習者を余計に混乱させないよう「禁止形イコール男性語」みたいな指導はやめろと言っている。
実際問題として、女性とのコミュニケーションでトラブルを招かないか心配なところ(やるなと注意されたのに、やり続けるとかさ^^;)


「ぱにぽに」という漫画で、日本語教室で使うのに面白い1コマがあった。
「思ったより普通だな」「普通って言うなー」詠嘆と禁止の用法が一度に!
「普通って言うな」は漫画「さよなら絶望先生」の常套句でもあり、いずれも女の子がしゃべっている。

参考文献

東京外国語大学言語モジュール トルコ語の命令形
『命令形複数の後に-iz/-üz/-ız/-uzをつけると、堅苦しい命令形ができる。この形は公式的な場面、不特定な人々に向けられた指示である場合、聞き手との間に個人的な感情を持ち込みたくない場合などに用いられる。』
……これを見た時、私は「なんてことだ!」と思った。
日本語の命令形の本来的な使い方が、くしくもトルコ語の文法ページで説明されていたのだから。

伝達場面の構造からみた命令形の諸機能
日本語否定命令文の歴史的変遷
日本語の命令表現について熱心に解説している英語のページ

ちなみに英語の命令表現も決して単純なわけではなく、単に「Do it!」というだけの命令文は「やって!」ぐらいのニュアンスで、「You do it!」とすると「やれ!」みたいなニュアンスになると言われている。

親子会話で便利な命令表現

ママと幼稚園児が道路を横切ろうとしている場面を思い浮かべよう。
そこには信号機は無く、車が来ないタイミングを狙って道路を横切る。
さてこの時、ちっちゃい子を相手に命令する表現はどれが適切か?
幼稚園児の日本語力は既にあなどれない。ネイティブの基礎的な表現は覚えてしまっている。
だから微妙なニュアンスの違いにも注意しないといけない。
このように現実にはなんでもかんでも「〜して」「〜しないで」を使えばいい訳ではない。
女性らしい男性らしい話し方を求める人は、生活感を失っている人だ。
上の4つの命令表現も、状況次第では正しいこともある。
例えば運動会のかけっこで、親のために走ってるんじゃないから「走って!」は微妙かもしれないから、主観を排除して掛け声みたいに「走れー!」の方が場面に合っているだろうという話になる。
それでも「どれも合わんなぁ」という時には、もっと当たり障りのない命令表現というのもある。
それはズバリ、ただの動詞だ。

動詞の現在形による命令表現

「早く渡る!」
砂糖抜き・ノンカフェイン・添加物なし。
これが実は、親子会話としてはものっすごく重要な表現なのだ。
しかし世の若いママさんの中には…子どもに向かって「〜して」という命令ばかりに偏っている人もいて vocabulary に少々問題を感じる事がある。

動詞の過去形による命令表現

「早く渡った!」
「お前はもう渡っている」みたいな(笑)、少しユーモラスな言い回しである。
どうしても日本語の命令形は「掛け声」の用法に特化してしまっているので、その代わりに過去形(完了形?)を使って「今!!」という意味合いを与えるのも良い。

「の」を用いる表現

「〜の。」という語尾の原義は「物」という名詞なので、「早く渡るの!」と言えば「これは早く渡るべき物・状況です。」という意味になる。
実際に今手に持っている物とか、現場を見せながら説明する時に使う。
これも親子会話ではよく出る表現なので、確認しておこう。

くれぐれも気をつけてほしいのは、たとえどんな表現を使おうとも、優しく聞こえるかきつく聞こえるかは「声の調子によって決まる」という事である。

「ように」を用いる表現

他に便利そうな言い方としては「〜ように」を用いた表現もある。
(「よう」は漢字で書くと「様」で、「に」は格助詞)
「風邪ひかないように。」「早く帰って来るようにね。」などと使う。
これは物事に関する注意事項であって、相手に対する命令の意味は含まない。

「こと」を用いる表現

「寝る前に歯を磨くこと」というように使う、命令というよりは忠告のような表現。
基本的には書き言葉であり、守るべき決まりを紙に書いて壁に貼る時なんかに使う。
話し言葉としては「なさい」と同じように親・教師・上司など指導的立場にいる人が使うが、その場合でもやはり、感情を脇に置いて淡々と決まり事を読み聞かせるような書き言葉的なニュアンスを帯びる。

「〜しちゃえ!」という言い回し

慣用表現として、ついでに覚えても良さそうな命令表現。
「大丈夫だと思うよ」と、軽く背中を押して促すような時に使う。
「〜ちゃう」「〜じゃう」というのは「自然の成り行きで仕方なく」という事であるから、これを命令形にしたとしても他人に指図する感じにはなりにくい。
女子トークでも珍しくない言い回しなので、この手の命令形もさらっと使えれば、かなり本場の日本人女性に扮することができると思う。

「せよ」という命令表現

現代語の命令形は「何々しろ」「答えろ」となるが、古語の命令形は「何々せよ」「答えよ」となる。
これは古語なので現代語の文法では説明できないが、まじめな書き言葉としてまだまだ現代語の中で生きている言葉である。
硬い文語表現として、例えば政治的なスローガンなどで「原発を停止せよ!」とか「大臣を辞めよ!」と言ったりする。
面白い話、小学校のテスト問題では「計算しましょう」中学校のテスト問題では「計算しなさい」高校のテスト問題では「計算せよ」と、進級するたびに何故か口調が変わっていく。
さすがに大学は「何でも有り」の世界だから、そういう決まり文句は無いけれど。

その他、文語的な命令表現

「くれる」の命令形を使って「連用形+くれ」「連用形+くれよ」などとする表現。
(一段活用なので規則通りなら命令形は「くれろ」のはずだが、命令形は「くれ」だというのが一般的な認識らしい)
例えば「手紙出しといて!」という頼み事を引用する時に「手紙出しといてくれと頼まれた」のように言うことがある。
これは、日本語の間接話法は純粋な書き言葉の形になる、というルールに基づく。
「〜くれ」という命令形は、依頼表現の間接話法として使われる場合が大多数である。

古語の命令形としては「〜したまえ」という言葉もあり、ニュアンスは「〜しなさい」と似ている。
たとえば巫女さんが「しずまりたまえ」などと唱えたりする。
古語だから現代語ではジョークでしか使えないけど、知っておいて損はない。
逆に、古語の禁止形としては「〜なかれ」というのがある。
例としては与謝野晶子の「君死にたまふことなかれ」が代表的だね。

他には敬語の「おやめになってください」を省略して「おやめ!」という「お + 連用形」の表現もある。
サザエさん原作でもカツオが時々使っている。
敬語だから改まった場面で使えるかと思ったあなた…これも古語のカテゴリーに属するので 、実際にはおどけて言う時にしか使えないのだよ、残念だったな、はっはっは。


漫画『そのおこだわり俺にもくれよ』のオマージュであるテレビドラマ『そのおこだわり私にもくれよ』。
「くれよ」は「くれよ」のまんまであり、巷の日本語教師が口うるさく言うほどのジェンダー規範は庶民の間には無い。

「んだ」を用いた命令表現

「〜んだ」については他のページで詳しく語っている。
この命令表現はあんまり日常会話では聞かない気がするが、広告などの文章では使えそうなので紹介しておく。
「これを使うんだ!」
これは単独では使えない言い回し。
前提として「これを使う」ことについての事情の説明があり、それを受けて「さあ、これを使うのだ!」みたいに指示する。
「行くんじゃない!」
これは「行って良いような物ではない」という注意をする禁止表現だが、これもそんなにたくさん聞く言葉ではない。
まあ使うとしたらダメ出しを入れる時ぐらいで、普通にイケない事を教えるのなら「行かないで」が適当だろう。
否定文では必ず「な」にアクセントを付けないと反語表現と間違えられるから注意。

「んだよ」を用いた命令表現

「〜んだよ」については親子会話ではけっこう使われることが多い。
「早く帰ってくるんだよ。」
これは「早く帰ってきなさい」と似ているが、「んだよ」を使った場合は早く帰って来るべき理由があるような感じを与える。
「んだよ」を下がり口調で言うと単に事情を伝えてるだけに聞こえるので、上がり口調にする。
なお命令表現「やるんだよ」に対応する禁止表現は「やるんじゃないよ」という否定文の形になる。

ちなみに「〜のよ」を使った命令表現については、実際の会話サンプルが入手できないため「無し」とさせていただく(文法的にも厳しい)。

「ちょうだい」を使う表現

ちょうだい(頂戴)は漢字熟語なので全く変形しないという事に注意。
「買ってください、見てください」を「買ってちょうだい、見てちょうだい」と言うこともできる。
この「動詞の連用形 + ちょうだい」はユーモラスな言い回しであるに過ぎず、使うべき場面という物は特に無い。
また、日常会話としてはそれほど普及していないが「〜ちょうだい」から派生したスラングとして「許してちょ!」というのもある。

現実的によく使われるのは「名詞 + ちょうだい」。
簡単な言い回しだから、欲しい物がある時によく使う。
「これちょうだい」「コショウちょうだい」「連絡ちょうだい」といった感じに。


まとめ

ネイティブの命令表現はこのように相当複雑だ。
ここまで詳しく教えてくれる人なんて、いるのかな…いたらマジで尊敬するよ。

命令表現の使い分け

禁止表現の使い分け


命令形「あけろ」と禁止形「あけるな」の使い分けパターンを8つもずらずら並べたが、これは実は書き言葉を使うべき場面とほぼ一致している。
それについては 独白体 の説明ページもあわせて読むと、より理解が進むかもしれない。


「やめろ」を男「めやて」を女だと思う本当の理由とは?

「このセリフは女と男のどっちだと思いますか?」というアンケート調査も面白そうなのだが、命令形は基本的に文語体なので「食べろ」「歩け」みたいに雑に言葉を選んでも、そこから日常的な場面を思い浮かべることは難しい。
適当な場面が無ければヤクザ映画を思い浮かべる他なく、それで男性のセリフだと答えてしまうのが実際だろう。
よく命令形の話題で「やめろ!」「やめてください!」という例文を出されるが、これもどうやら非日常的なのか、テレビドラマ等のテンプレ展開を思い浮かべることが多いらしい。
要するに、特定のキャラクターを連想させたりというノイズを除去したければ、もっと実生活に根ざした例文を探すべきだろう、という話。
さらに趣向を変えて、ファンタジーっぽく「飛べっ!」とか、お料理をしている時の「一緒に茹でちゃえ」だったら、また違った結果が得られると思うんだよ。
「がんばれ」という典型的な掛け声とか、例えは良くないが「死ね」という罵倒語なんかは、かなりユニセックスだ。
一度は「やめろ」で男性を思い浮かべた人も「原発やめろ」と来たらさすがに性別の問題じゃなくなるだろう。
「男友達どうしでは、おふざけで『やめろよ』『ほっとけ』みたいにツッコむけど…」と(あまり異性との交流が無さそうな人の)体験談が紹介されることもあるが、それに関しては女子がじゃれ合ってる時の会話でも全く同じなので。
逆に言うと、女性の使わない命令表現は男性も使わないんだよ。
本件は見かけ上、女性に対する差別のようではあるが、「世の男は乱暴で冷徹な言葉を好む」という男性に対する偏見も大きく影響していると思う。

「おい!」から考える日本語の命令形

「おい!」という言葉について考えると、命令形のクセがよく分かる。
「お〜い」というのは遠くにいる人に向かって呼びかける、かなりエネルギーの強い呼びかけ表現だ。
これ自体は罵り言葉ではないのだが、逆にもしも近くにいる人に向かって「お〜い」というと、かなり威圧する表現になってしまう。
結局のところ、日本語の命令形もこれと同じだ。
日常会話における命令形の最もありふれた用法は「掛け声」であって、「罵り言葉」などの用法はあくまでも派生的な物である。
…と考えておくと、あまり変な誤解を招かなくて済む。

ある役所が東北の大津波の際に「逃げろ!」というガチ命令形でアナウンスをおこなった。
これは性質上、罵倒語になり得ない。
その結果「あ、このアナウンスの仕方、いいねぇ」という話が他の自治体にも広がっているそうだ。
その時は是非、女の人の声で聞いてみたい。

で、君は命令形をどう教えているの?

熱血刑事ドラマの見過ぎなのか、日本語の命令表現について「罵り言葉」としてのイメージばかりが先走っている。
今では決まり文句だけに残る「〜ませ。」という言葉…あれだって命令形なわけだし、ましてや男性語であるかのように吹聴して回るなんて随分とレベルが低くなったものだ。
初級レベルでは「あまり使わない」という説明で妥協するのは分かるが、ひどい所だと「男は偉いから使ってもいい」という教え方をしていたりするわけで、
しかも挙げている例文が「夫から妻へ」「兄から妹へ」……これはどう見ても炎上案件なのでは(´・ω・`)
なお、このように余計なジェンダーバイアスを植え付けてしまう事を近年では「隠れたカリキュラム」として問題提起されている。

庶民感覚のある先生が増えてきたという事なのか、「女性が使わないわけないだろ」と反応を示す日本語教師も何名か見つけている。(たとえば この人とか
その一方、2019年現在で未だに「女の子は使わないようにね」みたいなWebコンテンツがあがって来てしまう現状もある。
ググると「第33課」なる物がいっぱい出てくるんだけど、強盗の場面だとか生活感の無い文例を出して来るのには、本当に草が生えるw
命令形の授業で使う教材が「金を出せ」「動くな」ばっかりだと、あまりにも寂しいので(泣)
みなさんの毎日の暮らしを思い返してみれば、命令形・禁止形は絶対に使っているはず。
身近な物として、たとえば道路標識の「止まれ」だってあるのに、そこを素通りしていきなり非日常の世界に行っちゃあダメだろうと…。

はるかぜちゃんの「ぼく」は日本語の進化? 専門家解説がかなり深い
最近見かけたこの記事は、全体としては面白いんだけど「女性が男性に命令する言葉がない」のくだりが分からないんだよね…。
そういう事実は私の身の回りでは見当たらないし(テレビドラマやアニメも含めての話なので地域差は関係ないはず)、観測対象の範囲について疑問が残る。
漫画の中だと「母親は女言葉」というステレオタイプがまかり通っているけど、それでも命令形は使う(←ここ重要)。
当然、罵倒語としての命令形だって使う。きみが思っているほど、世の女性たちはのほほんと生きてるわけじゃないからね。
「仏の顔も三度まで」怒っても命令形を使わない人なんて、いたら逆に怖くね?
少なくとも今時の女性は命令形を使いまくりのしゃべりまくりである事は間違いないはずだが、私にとってこれは別に革新的な事なんかではなく、普通に昔のとおりにやっているだけの事だと思う。

いずれにせよ、もしも命令表現を持たない言語があったら、それは「欠陥言語」と言うべきで非常に稀有な存在となる事だろう。
世の中には「世界的に稀な存在」になりたい人も多いようだが、私にその趣味は理解できない。

参考文献
ジェンダーとポライトネス


次の問題挑戦してみよう

君はいくつわかるかな?(クイズ形式かよ)

問題1. 父親が海水浴場で溺れそうになっています。この時、父親の口から出る言葉は?

B. 助けろ! 答えを見る

×
自分が助けを求める表現としては間違いです。
例えば、ぼけっと見てる連中へのツッコミならこの言い方はできますが、意味に違いが出てきます。
また、溺れている犬を見つけた時であれば「助けろ」となるでしょう。

A. 助けて! 答えを見る

大正解です。
必ず「助けて(くれ)」と言うので、このまま覚えましょう。
自分への助けを求める表現としては、基本的に「助けろ」「助けなさい」との言い換えはできません。

C. 助けなさい! 答えを見る

×
自分が助けを求める表現としては間違いです。
ぼけっと見てる連中をいましめるならこの言い方も可能ですが、意味に違いが出てきます。
仮に、溺れている犬を見つけた時の発話だとしても緊迫感が足りません。

問題2. 一刻一秒を争う戦場。迫り来る敵襲。そこで女性指揮官の口から出る言葉は?

A. 撃て! 答えを見る

大正解です。
とても指揮官らしい口ぶりです。
またこの口調であれば、一刻一秒を争う事態であることが伝わります。

B. 撃って! 答えを見る

×
残念!!
この言い方では自分の欲望のために指図をしているように聞こえます。
状況を総合的に判断して指示を出すべき指揮官の言葉としては不適切です。

C. 撃ちなさい! 答えを見る

×
どちらかといえばバツです。
一呼吸をつくぐらいの余裕があるような場面で出る言葉です。
一刻一秒を争うという状況下で、まずこういった発話は考えられません。

問題3. ある男性の患者が診察を受けに来ましたが、なんと医者に向かってタメ語で…?

A. 診ろ。 答えを見る

×
何様だよ!
それは医者としてふさわしい行いをとるように要求する言い方。
いや、主観を排除して己の病状を指差し「みろよ」は有り得ますが、
やはりここでは言わないのが無難です。

B. 診て。 答えを見る

はい、正解。
自分のためのお願い事なので、この言い方になります。
丁寧語で言うなら「診てください」「診てもらえますか」とかですね。

C. 診なさい。 答えを見る

誰の差し金だよ!
……もしかして教授っすか。ああ、これは失礼しました。
どうぞどうぞ、お手並み拝見してくださいませ。(三角?)

問題4. 水泳教室で、グズグズしていて泳ぎ出さない子がいました。そこで女の先生が…?

A. 泳げ。 答えを見る

×
個人的にバツです(もろくそ私の主観ですが)。
いや、熱血指導に慣れてる子どもならいいかもしれないけど。
無理矢理じゃん。これ、拒めないじゃん。

B. 泳いで。 答えを見る

う〜ん、なんか曖昧なんですよねぇ。採点し難い。
「さあ泳いでみてもいいよ」の省略形で取られたら、本人にやる気が無い限り動かないでしょう。
最悪「なぜ私のために泳いでくれないのだ」的な意味で取られたら、子供はふんぞり返りますね。

C. 泳ぎなさい。 答えを見る

まあ、生徒を指導する立場としては、この辺りが適当でしょう。
甘くも厳しくもなく、やや中間的な命令口調です。
しぶしぶですが、泳ぎ始めてくれるんじゃないでしょうか。

問題5. ロボットコンテスト決勝戦で、操縦を任された女子高校生。ゴールポストに狙いを定めて……

A. 行け! 答えを見る

さすが!
それでこそスポーツ番組です(ロボコンってスポーツだっけ?)。
自信と緊張感と熱き意志とを表現するならズバリこれです。

B. 行って! 答えを見る

ロボットの擬人法と併せて、うまくいってくれるようお祈りしている感じでしょうか。
でも、もうちょっと試合らしい言い回しが良かったですね。
本人の気分次第でこういう発話も無くはないでしょうから、おまけして三角です。

C. 行きなさい! 答えを見る

×
たぶんバツです(うん、たぶん)。何キャラかぶってんねん。
「なさい」は「役割語」としての性格を帯びるため、漫画のキャラっぽく聞こえます。
あんまりNHKロボコンとかでそういう場面は見たことないですねぇ。

問題6. ある女の子が強盗に襲われています。そこで女の子が叫んだ言葉は…?

A. やめて! 答えを見る

「やめろ」と「やめて」のどちらが良いかは一概に言えません。
嫌がるのを見てハァハァする変態を相手に「やめて」は効き目がありません。

B. やめろ! 答えを見る

「やめろ」と「やめて」のどちらが良いかは一概に言えません。
すぐにキレて刃物を振り回すような相手に「やめろ」は危なっかしいです。

C. やめなさい! 答えを見る

×
生徒が先生を襲っている等の状況でもなければ、おかしく聞こえます。
しかし姉御肌のキャラだったら、まあまあ役にハマるんじゃないでしょうか。



2次元と3次元の女性達の素敵な命令表現

女心っていうのはIT用語でたとえたらオープンソースみたいなもんだよ。
さてさて、これから命令形・禁止形の超うまい使い方を並べていくからね。
イメージしやすいように顔文字も付けておくけど、基本的にどれも適切な場面で使われているはずだよ。

下駄を脱がせろ😠

── 女性差別に抗議するデモで使われたスローガン

デモ行動では普通、命令形を使うよね。
参加者が全員女性だからといって「原発やめて」「原発やめなさい」にはならない。

きらめく素肌で、進め、女の子😛

── 池田エライザ、美容サロン「ミュゼプラチナム」のCMで

こんな女子力アピール丸出しの台詞でも命令形は欠かせない模様。
積極的意志を示す掛け声では命令形が好まれる。

不倫してもいいし賄賂受け取るのもどうでもいいから保育園増やせよ。😣

── ある母親の有名なブログ記事「保育園落ちた日本死ね!!」

抗議の意思を伝える場合は命令形を使うのが適当。
これを「教科書通りの女性語」に直したら、ただの泣き寝入りに聞こえる。

😈「引っ越せ!引っ越さんか!」「はいやれやれ、なんぼでもやれ。」

── かつてワイドショーを騒がせた騒音おばさん

ご本人には申し訳ないと思いつつも、
彼女のコラージュであるMIYOCO音楽はお気に入り、なんかカッコ良くて(苦笑)

いや、お前が頑張れやって。こっち頑張ってるから、お前も頑張れ。😅

── ロックバンド「モスインライラック」のメンバー、lisa13

「頑張ってね」と言われるのが好きではないという彼女。
このようにツッコミを入れる時は普通、命令形を使う。

何も咲かない寒い日は、下へ下へと根を伸ばせ。😀

── 高橋尚子の座右の銘

文章はなるべく簡潔な方がテンポがよく、「〜させていただきます」のような長ったらしい言葉は避けられる。命令形に関してもそういった傾向は多少見られる。

この変態ばか浮気男め覚えてろよ〜😤

── 川崎希、夫アレクの不倫報道に激怒

先生がまだ殺されないうちは、これからも面白い言葉を見つけ次第アップしていきます。
ヌルフフフフ……

しっかりしろ、私。😵

── よくある言い回し

このページの冒頭で、人に向かって命令形を使う事は控えるべきだと言ったが、
自分に向かって言う分にはどうでもいい(というか「〜して」とは置き換え不可)。

痛いの痛いの飛んでけ〜😇

── 慣用表現

語感を良くする理由もあり、おまじないの類も普通は命令形になる。
一般に、物に対する命令形は罵倒語とは受け取られない。

明日天気になぁれ😄

── おまじない

これでも命令形を男性の罵倒語だと思う人は、日本人なのか?
これと同類の言い回しとしては「大きくなあれ」「花いっぱいになあれ」等がある。

😕探せ。

── 警察犬に対する声符(コマンド)

必ずしも英語至上主義ではない。
また、男女で言い方を変えるという非効率なことはしない。

よし、切っちゃえ。😉

── 自分の通ってる料理教室で

これも、ある種の掛け声のようなもの。
素早い決断を表している。

同情するならカネをくれ😡

── 1994年頃のテレビドラマ「家なき子」

主役の女の子の言葉であり、流行語として歴史に残る名台詞。
この例文を日本語の教科書にこっそり混ぜたい。

英語やめろ😐

── テレビドラマ「IQ246」、刑事の女のツッコミ

キザな英語の台詞を吐くと、もれなく入るワンパターンな演出。
相手の痛い所を突く命令形でなければ、そもそもツッコミは成立しない。

石松さんは帰ってよ。っていうか帰れよ。😒

── テレビドラマ「警視庁いきもの係」

何故言い直した?それは、2つは意味が違うからだ。
「懇願」から「非難」に切り替えたんだ。

行けっ😆

── スーパーファミコン「パネルでポン」

掛け声で使用する命令形。
ちなみに主役のヒロインの掛け声は「行くぞ!」。すばらしい。

こら、逃げるな😅、接客接客!

── とある猫カフェの店主(女性)

わたくしのお気に入り猫カフェのひとつ。
これもね、猫に対するコマンドじゃないけど「掛け声」用法というヤツだ。

ごまかすな。それはただの性差別だ。😡

── 順天堂大医学部が不適切入試

我が国にも、デモ行動の文化がだいぶ浸透してきました。

手すきなら 替えてくれよ そのオムツ😩

── 産後カルタ ~あるある! これがリアルなママライフ~

1文字足らずの川柳。たとえば「替えてちょうだい」にすれば575になるのだが、それでも敢えて「〜くれよ」を使った理由とは…?

さあ、召し上がれ。😊

── アニメ「サザエさん」のある日の放送より

おふねさんの台詞。
そういえば、さりげなく夫婦別姓だよね、あの家。

前へ、進め。😀

── 世界名作劇場「家なき子レミ」ヒロインの座右の銘となる言葉

おやおや、これは懐かしい。これを「進んで」と言うと文法的に混乱するし、
「進みなさい」だと「誰に話しかけてるの」となる。

2位って言うなー😂

── 花とゆめ連載漫画「Special A」主人公・華園光がよく言う台詞

少女漫画の主役がどのタイミングで「てよだわ言葉」を使わなくなてっきたのか、調べてみたいんだよな。ちょっと気になる。たぶん1990年が境目。さくらももこ氏は当初から使っていない。

私の歌を聴けー😆

── 「マクロスフロンティア」主人公ランカの決め台詞

「聴いてー」でも「聴けー」でもそれは本人の好みなのだけれど、
内向的か外向的かどちらのキャラクターで行くかによる使い分けになるかと。

人の心をしばるな!😠

── アニメ「HUGっと!プリキュア」第19話

お姫さまになりたい男の子とかが出てくる回。
まだまだ詰めの甘い部分はあるにせよ、本作はジェンダー問題を意識しているらしい。

闇の力を秘めし鍵よ。真の姿を我の前に示せ。😲

── カードキャプターさくら

別にプリキュアが特殊なわけではない。

お花、お花、咲きまくれ〜😁

── スマホ向けゲーム「AFKアリーナ」フレイラの声

チームで分担して作っているから作風の統一感がないんだよな。
なくて良いと思っているが。

見るな!😱

── スマホゲームの広告

ちょっとエッチいゲームの広告より

「たしか、 巫女は食べてもいい人類だって言い伝えが、」
「言い伝えるな!😅」

── PCゲーム「東方紅魔郷」霊夢編 3面

「てよだわ言葉」でしゃべたせたとしても、命令形を排除できなかった模様。
「女性は命令形を使わない」ルールなど誰も知らない。

「メイ、こら、起きろ😧」「飛べっ😕」「去れ😠」「だ〜ま〜れ〜〜😡」

── ジブリアニメのヒロインたち

おっさんの作ったアニメで命令形が出てくるというのはポイント高いね(笑)
おお、天下のジブリよ。

ふざけんな!😲

── 講談社X文庫より、1996年発表のタイトル

『たまに「ちきしょー!ふざけんなー!」って、空に向かって叫びたくなるときってるあるよね。』
女子高校生を主役としたライトノベル。


学校や教科書で教えている事など、えてして実際とずれている物。
それにつけても「日本語の命令形」に関する指導内容が、初学者に大きな誤解を招く致命的な物であったがために、このように長々と文章を連ねることになった訳である。
それでは、日本で長年暮らし続けている君達に問う。私はネトウヨではないので「在日」かどうかは問わない。
君達が流行に明るくて社会と関わりがあるのなら、女性の口から出て来る命令形「〜しろ」「〜するな」を必ず耳にしているはずだ。
思い出してみよう。そしたらそれを試しに「〜して」「〜しな」「〜した」「〜しないで」に置き換えてみよう。
正直に言って、どうだ。ネイティブ・準ネイティブの感覚からして、なんだか座りが悪く不自然に聞こえないだろうか。
それはすなわち「〜しろ」を使わなければ、表現できない意思表示なのである。

命令形を直接的に話し相手へ向けると威圧感を与えることは確かであり、もしも君がお行儀の良い旅行者なのであれば、使わなくてよい表現だ。
しかし、現地でまともに暮らすとなれば様々なトラブルに直面することになるし、それに対する明確な意思表現として、時には罵倒語ですら適宜使用していく事が必要なのである。
たとえば痴漢に襲われた時「やめて」と「やめろ」のどっちにするか選ぶのに、いずれが淑女的な言葉遣いかというキャライメージから考えるなど場違い極まりない。
もっとも、目的語が me である場合「やめて」と言いがちなのは承知しているが、誰が見ても明らかな悪事に対しては「やめろ」と言うもんだろう…と思う。
みんなには、場面に応じた使い分けという観点から考える習慣を身につけてほしい。



参考文献
漫画における男女の文末表現
(おっと、こっちの論文ではなんと、命令形が「男女ともによく使う表現」に分類されているぜ)



最後に、教育に携わる方々にひとつの質問をする。
「将来的にマナーの悪い男性が増えてほしいと思うか。」
また、べつに教育者になるつもりの無い方々にも次の質問をする。
「君たちはどうしゃべるか。」



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