日本語の語尾「ってば」「ったら」「っつの」の使い方

それと、おまけに縮約形も…

「〜ってば」も覚えとけってば

元々は「〜と言えば」の省略だ。
相手にうまく意味が伝わらなかった時に、もう一度言い直す表現。

文例

「〜ったら」も一応載せてやるったら

「〜ったら」は「〜という物と言ったら」の省略形。
「人の名前+ったら」という言い方はそこそこ有る。
「〜ってば」と同じ意味でも使うらしいが、あまり聞いたことはない。

文例

他には「やめるったらやめる!」という縮約形もあり、これは「やめると言ったらやめる」「私がやめると言っている以上、私はやめる」の省略である。

「〜っつの」も覚えとけっつってんだよ

相手にうまく意味が伝わらなかった時に、もう一度言い直す表現。
「〜っつの」は「〜と言っているの!」の省略形で、これは罵倒表現に近い。
それよりも「〜ってば」の方が比較的普通に使える。

文例


「〜と言っているんだ!」「〜と言っているの!」の縮んだ形だということで、他にも「〜つってんだ」「〜つーんだ」「〜つってんの」というのもあり得る。
が、あまり意味の違いは気にしないように。どうやって短縮したかの違いだけなので。

会話の聞き取りに関わる超重要ポイント

実際の会話における「ってば」「ったら」「っつの」の使用頻度は"要調査"。
気がついた時にはもう old-fashioned だったりするかもしれないのでね…
けど、ここからの説明はリスニングができるかどうかに影響してくる部分なので、無視できない。

「ツー」の現れ方

「〜と言う」が音便化される場合「〜っていう」「〜ってゆー」ぐらいが普通だが、さらに短縮されると「〜っつー」になる。
(さらに、おどけて「ちゅー」という発音にする事もある)
丁寧語では短縮すること自体を良しとされない一方、くだけた会話の中では単に短く言っているだけであり、決して下品に話そうとしているわけではない。
言葉の先生の中には、何かと縮約形を否定する人も少なくないけど、それは庶民の言葉を見下していることになる。

2文字の「てい」が1文字の「つ」に置き換わっている。

先ほどの「〜っつの!」を罵り言葉だとした理由は、そもそもの話「〜と言っているんです。」という言い回し自体にトゲがあるからだ。
これは英語の「I tell you」も同じで、もうひとつぐらいクッション言葉がないと角が立ってしまう。

「〜って言うの?」「〜って言うんなら」から「言う」だけが抜けて、「〜っての?」「〜ってんなら」という縮め方もありえる。無理に使わなくてもいい。

「ん」の現れ方

特にRとNの間の音便化は韓国人にもタイ人にも馴染みのある物かと思われる。
ある特定の品詞の前で、「る」で終わる動詞の語尾が「ん」に変わる。
これは日常会話では非常によく出てくるパターンであり、純粋な音便化のひとつに過ぎず、特別なニュアンスや悪意などはほとんど無い。

RNのパターン

この他にも、否定の「ない」が「ん」に置き換わったり、準体助詞の「の」が「ん」になるパターンもあるが、構文から見分けるようにしてほしい。
活用語尾の「る」が「ん」に変わるのと、否定の「ない」が「ん」に変わるのとで、互いにぶつかる事もある。
これは一種のスラングだから、混乱を避けるために "使わない" という選択もできる。
五段活用の場合はそんなにたくさん無いだろうけど、原形が /aru/ で終わる他の動詞とぶつかることがある。

一段活用の場合は、同じ動詞の肯定文と否定文とで完全にぶつかり合うので注意。
ひとつだけ例を挙げるけど、他の一段活用の動詞も全てこのようになる。

「む」「ぶ」で終わる動詞の連用形と、否定詞「ん」がぶつかるパターンとしては、次のようなものがある。
(ちなみに、この連用形は標準的な形なので…)

「〜てない」が「〜てん」に縮まることはない。

【おまけ】日本語の縮約形完全ガイド

これぐらいは他のサイトにも載ってるだろうと思いつつ、先程の話のついでに、ありったけの短縮パターンを挙げちゃおうと思う。
あらたまった場面では縮約形を一切使わない事がよろしいとされる一方、普段の会話ではむしろ縮めるのが当たり前になっている。
注意事項があればその都度説明する。他のページでもさんざん言ってる事だけど、あなたの性別なんかどうでも良いので、使う場面にだけ注意してください。
元の形短縮説明
たべれば
たてば
きけば
そう言えば
たべりゃ
たちゃ
ききゃ
そういや
仮定表現でそこそこ使われる縮め方。
/b/ の子音が抜け落ちることによる音便化。
早口でしゃべる時にしか出てこないので、聞き取りにくそうだなと思ったら使わない方がいい。
なければ
かわいければ
なけりゃ / なきゃ
かわいけりゃ / かわいきゃ
「〜ければ」から /b/ の子音が抜け落ちて「〜けりゃ」になる。
さらに形容詞の場合は /r/ も抜け落ちて「〜きゃ」になる
やらねばやらにゃこれは古語の否定文の仮定表現。
なくては
やっては
これでは
それは
そのときは
噛みはしない
なくちゃ
やっちゃ
これじゃ
そりゃ
そんときゃ
噛みやしない
母音 /e/ で終わる助詞や代名詞などの後に、係り助詞「は」が続く場合に起こる短縮。
/w/ の音が抜け落ちることによる音便化。
特に「ては」「では」に関しては「ちゃ」「じゃ」の方が口語的。
日本語は基本的に名詞の語尾変化を好まない言語なので、たとえば普通名詞「雨は」を「あみゃあ」にする事はない。
もっている
もっていた
もっていて
踏んでいる
もってる
もってた
もってて
踏んでる
動詞に「いる」を合成する時に「い」が抜ける。
もっていく
もっていった
もっていって
飛んでいく
もってく
もってった
もってって
飛んでく
動詞に「いく」を合成する時に「い」が抜ける。
「くる」の場合は縮まらない。
もっておく
もっておいた
もっておいて
運んでおく
もっとく
もっといた
もっといて
運んどく
動詞に「おく」を合成する時に母音 /e/ が抜ける。
食べてしまう
転んでしまう
食べちゃう
転んじゃう
/eʃim/ の部分が半母音 /j/ に置き換わる。
くだけた会話では100%このような言い方になる。
食べてしまう
転んでしまう
食べちまう
転んじまう
この縮約形は old-fashioned なので、ギャグでしか使えない。
わからない
やらない
はしりな
たべるな
できるんだ
来るの
わかんない
やんない
はしんな
たべんな
できんだ
来んの
原形が「る」で終わる動詞で起こる短縮。RNが並んだ時NNになる。
日常会話でありがちな音便化だけど、語幹1拍の動詞には馴染まないことが多い。
似たような音便化で「〜からな」が「〜かんな」になる事もたまにある。
いるじゃん
するぞ
やるから
あるだろ
やるわ
いんじゃん
すんぞ/すっぞ
やっから
あんだろ
やらあ
原形が「る」で終わる動詞は、他の品詞の手前でも音便化することがある。
RNのパターンと比べると頻度は下がるので、あえて使う必要は無い。
するか
くるか
すっか
くっか
「る」で終わる動詞限定で、意図せずともこういう発音になりやすい。
「る」が欠落して促音だけになる。
やるのだ
やるのです
やるんだ
やるんです
この文末表現で「の」とするのは書き言葉だけで、
話し言葉では「ん」が標準化している。
買った物買ったの / 買ったもん修飾語の付いた名詞「もの」の短縮は2通りあるが、どっちでもいい。
そういう物だそういうもんだ当然だという意味で使う場合は「もん」になる。
友達のうち
おばあちゃんのうち
友達んち
おばあちゃんち
「誰々の家」と言う時の短縮形「んち」は、辞書で引けるようにしてほしいくらいの頻出表現。
「ん」が2つ連続する時は1つにまとめる。
わからない
できないよ
やらなかった
食べないでいい
わからん
できんよ
やらんかった
食べんでいい
古語の否定文「できぬ」「せぬ」等に由来する物。
共通語としてはあんまり今風ではないのでボケツッコミ専用だが、それほど下品なわけでもなく比較的よく聞く表現であり、一部の方言では文法として残っている。
否定の「ない」が「ん」に変わる。

しかしこの音便化には、ひとつだけ危険な所がある。
「できないの」「書かないの」のつもりで「できんの」「書かんの」と言っても、聞き手は「できるの」「掛かるの」と解釈するかもしれない。
やらない
カバンがない
ちいさい
すごい
かっこいい
やらねえ
カバンがねえ
ちいせえ
すげえ
かっけー
形容詞の語末 /ai/ または /oi/ が /ee/ になる。
このタイプについては、苛立ちを表すためにわざと使う人が一定数存在する。
独白・ギャグ・ほめ言葉の場合は気にしないが、そういった事情から、相手への答えに使うと汚い言葉だと思われやすいので注意。

(否定の「ねえ」は間投助詞「ね」と形が似ているので注意)
わるい
さむい
かゆい
わりい
さみい
かいい
/ui/ で終わる語尾の形容詞が、 /ii/ という語尾になる。
これは俗語の中でも比較的ダサい言い方なので注意。
ただし「あつい」「さむい」「かゆい」を早口で言うと自然に「あちちち」「さみさみ」「かいかいかい」になってしまうのは仕方の無い事だから、それを下品だと決めつけるのは早とちり。
って話し言葉の直接話法では「って」が標準化している。
文頭では促音「っ」が省略されることもある。
こう
そう
ああ
どう
こー
そー
あー
どー
これは、まじめに /ou/ と発音しなくてもいい。
このような
そのような
あのような
どのような
こんな
そんな
あんな
どんな
これは普通に単語として覚えてもいいが。
「こんな」「そんな」「あんな」はネガティブな意味で使われることもあるが、それは文脈で見分けるしかない。
(何に対して「こんな」と言ってるのか分からない場合、良くない意味で受け取られるかもしれない)
遊ぼう遊ぼー
遊ぼっ
遊ぼ
意向形の語尾 /ou/ は長母音や促音に変わることもよくあり、特に文末では短母音 /o/ だけになることもある。
さむい
あつい
おおい
こい
さむっ
あつっ
おおっ
こっ
形容詞を単独で発する時のしゃべり方で、あまり文章の一部で使うことはない。
副詞述語とでも言うべき物で「さむさむ…」と繰り返すこともある。
いう
いった
いえば
そういう
ゆう
ゆった
ゆえば
そーゆー
動詞「言う」の音便化。
授業の時
箱の中
先生の所
授業ん時
箱ん中
先生ん所
所有格「の」が「ん」になることもある。
ただし、これは聞き取りやすさを大きく損なう物であるから「〜ん中」「〜ん所」などのごく限られた用例以外では使われない。
あなたあんた短縮・音便化させると丁寧語ではなくなる。
「あなた」と「あんた」は別の単語だと思った方がいい。
と言うっていう
ってゆー
っつー
先程述べたとおり

特定の単語に固有の縮め方



「あったりめえだ」という崩し方があるからといって、同じ音節を含む他の単語までそうなるわけではない。

元の形短縮
ありがとうありがと / あんがと(稀)
ありがとうございますあざっす(一種のスラング)
すみませんすいません / すんません(稀) / さーせん(極めて稀)
だいじょうぶだいじょぶ
しようがないしょうがない
本当ほんと
同じおんなじ
このあいだこないだ
まったくったく
おおきいおっきい
ところとこ
おまえおめえ
それでそんで
良いかいっか
けっしてけして
絶対ぜってえ
違うちげえ
これくらい
それくらい
これぐらい
それぐらい
こんくらい
そんくらい
こんぐらい
そんぐらい
ここから
そこから
どこから
こっから
そっから
どっから
はじめから
最初から
はじめっから
最初っから
〜ていられない〜てらんない
〜てあげる〜たげる
〜です〜っす
〜でしょ〜っしょ
〜しかない〜っきゃない
〜事だ〜こった
○○と言えば○○けど○○っちゃ○○けど

発音は崩しても表記は崩さない物

その1

漢字の音読みで二重母音 /ei/ /ou/ の部分を口でしゃべる時、習慣的に /ee/ /oo/ という長母音になる。
例えば「栄養」は「えーよー」、「教育」は「きょーいく」、「王様」は「おーさま」と発音されるが、決まりではないので「えいよう」「きょういく」「おうさま」と発音してもいい。
このような例はほとんど漢字熟語ばっかりだが、和語の中で「ふくろう」「こうだ」が「ふくろー」「こーだ」となる例も一部存在する。
ただし動詞の終止形は /u/ で終わるのが決まりなので、例えば「追う」は「おう」としか発音しない。
またこの音便化は文字には表れず、たとえひらがなで書いても「えい」「おう」という表記を保つ。
(ごく一部の感情表現では、俗に「キレーな」「さいこー」「サイテー」「かんけーねえ」と書くことも無くはない)

その2

1拍の名詞の後の格助詞を省略する場合(特にその名詞が文頭に来る場合)、名詞を長母音として発音するのが習わしである。
例えば「血が出る」「字がきれい」「蚊が飛んでる」「目がかゆい」「絵を描く」「歯を磨く」「手を上げる」「気を遣う」など。
話し言葉では格助詞を省いて問題なければ省いて構わないが、その代わりに「ちーでる」「じーきれい」「かーとんでる」「めーかゆい」「えーかく」「はーみがく」「てーあげる」「きーつかう」という発音になる。
格助詞を省かない時は長母音にしない(逆に「えーが見たい」と「映画見たい」を間違えたりする恐れが生じるため)。
これは聞き取りやすさに配慮する物なので、文面上で長母音にする習わしは無い。

その3

決して文字には表れない発音崩れは他にも多少の例があるが、あとはだいたい、特定の単語・成句にだけ見られる音便化である。
幼稚園児だった頃の私は「体育館」を「タイクカン」だと思っていた。
周りの人があまりにも「たいくかん、たいくかん」と縮めてしゃべるからで、なるほどあの頃は「体を育む」という漢字熟語として認識していなかったんだなあ、という思い出がある。
ほかにも「気をつけて」という言葉なんかは、どう聞いても明らかに「キョーツケテ」と発音されている。
(これは「気をつける」という成句限定で、その他の「気をつかう」等は文字通りにしか読まない)
発音が面倒臭いということなのか「全員」「原因」を「ぜいいん」「げいいん」みたいに発音する人も少なくない。
「洗濯機」は複合名詞だから「せんたくき」と読みたいところだが、日常よく使われる言葉だと「せんたっき」になってしまうこともある。
(これにつられて他の複合名詞「掘削機」「発育期」などを「くっさっき」「はついっき」と読んではいけない、意味が通じない)
このあたりも字面には決して表れないが……
もちろん文字通りに「たいいくかん」「きおつけて」「げんいん」等としゃべっても、ネイティブ発音として何の問題もない。

一部しか紹介されていないが 韓国語みだれ語大辞典 というページがある。
まあ、モンゴル語でも何でもこんな調子。モンゴル語はせっかく新しいアルファベットを導入しても、既に実際の発音との乖離が広がっててね…
ちょっと日本語がややこしいからといって、そんなに引け目に感じる事はないと思う。

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