日本語の文法における「時制」の超まとめ

ヨーロッパ言語は文法上「時制」を重んじる事で知られるが、東欧・中東あたりに行くと少し緩くなる。
東南アジアまで行くと相当ふわっとした感じになる。
では、日本語の場合はどうか…。

概要

動作を表す動詞は、現在形だけど未来の事だったり過去形だけど今の事だったり、未来志向の意味になりやすい。
これに対して状態を表す述語は、現在形は現在で過去形は過去の意味でしかない。

ガチで過去形

過去形という呼び名は決して偽りではなく、昔のことを話す時にもしっかり使われる。

判断した時点が過去である

日本語能力試験の定番ネタ。本質的には過去形と同じ物。
以下の例文では、少し前の状態を言い表している。普通に考えたら今でも同じ状態でいるはずだが…?

この種の表現は、主に状態を表す述語なので、動詞の場合は「ある」「いる」が付いてるはずである。

現在完了っぽい表現

完了形としての性格が強く出る用法。主に「事情の変化」などを表す。
動詞の場合は過去形と全く同じ形だが、形容詞・名詞の場合は「〜なった」を合成する。

未来完了っぽい表現

未来完了なんていうのはあまり日本語では馴染みが無いので、そんなにパターンは多くないと思う。

「完了形」なんて言っちゃったけど、(上のようなパターンを除き)日本語の助動詞「〜た」が将来を指し示すことは無いので、中国語とかタイ語とかそっち方面からの学習者は注意。

過去・現在・未来に関わらない物

不定詞っぽい表現


「時制の一致」のルールには言語ごとにばらつきがある。
英語の授業で習った「時制の一致」させ方は、あくまでも英語だけのお作法だ。

未来

日本語で未来の事を言う場合、動詞については基本的には現在形と同じ形でいい。
ただし形容詞・名詞には「〜なる」を合成する必要がある。

ガチの現在形を作る

動作を表す動詞の現在形はしばしば未来の意味になりやすいが、未来の事ではなく、特に現在の事を言いたい場合は「ある」「いる」を合成する。
「〜ている」を現在進行形として扱うこともできるが、実際には現在の状態を表す場合が多い。
今やっている途中の事には限らず、やり終わった結果が今そこにあるのを言い表す場合もある。
結果とか状態をいう場合、自動詞なら「〜ている」他動詞なら「〜てある」と使い分ける(「いる」「ある」を単独で使う場合と異なり、人か物かの区別でない事に注意)。

なお、形容詞・名詞文については、もともと状態を表す物であるから現在形は現在の事しか表さない。

現在進行を表す例

現在の状態や結果を表す例

「いる」「ある」の単独使用

「いる」「ある」の2つの動詞は、それ自体が現在進行・現在状態を表す。

なお方言によっては、「いる」を二重に合成した「いてる」という形があったり、進行と状態とで「〜しよる」「〜しとる」を明確に使い分ける事もあるらしい。

半過去形

「〜している」を使うと、未来ではなく現在である事が分かりやすくなった。
一方「〜していた」を使うと、現在ではなく過去であるという意味になりやすい。
ただしこの場合も、たまに直近の状態を言い表すことがあるので注意。
(形容詞・名詞文の過去形には完了形のニュアンスなどが無いので、ただの過去形で良い)

過去否定文のまとめ

韓国語でも中国語でもそうだが、否定形の時制が超テキトーな言語はけっこうある。
日本語もまた然り…。

(1) 過去の事として扱う場合、「〜した」の否定は「〜しなかった」となる。


(2) 現在完了として扱う場合、「〜した」の否定は「〜していない」となる。


(3) 過去進行・過去状態として扱う場合、「〜していた」の否定は「〜していなかった」となる。


(4) 「〜ていない」の過去形


(5) ただの現在形

意味上の未来形

以下は特定の意味を表すための語尾表現であって、時制を示すための物ではない。

まあ「何々しよう」という表現は、未来の事しかありえないわけだが…。

こちらはただの推量表現であって、時制は特に関係ない。

意味上の完了形

同様に、「何々してしまう」という語尾表現も、別に完了形を示すための物ってわけではない。
確かに意味は完了形に近いけどね。
どこかで見たモンゴル語の学習サイトでは、こういうのを「完了形」ならぬ「完成形」と呼んでいた。

…と、悪い事に限らず「成り行きに任せる」みたいなニュアンスでも使い、文脈によっては良い意味にも使える。

名詞修飾

動詞文を修飾する例

形容詞文を修飾する例

修飾語または述語のいずれかが過去形になっている場合、今でも楽しいか否か・今でもその映画が存在するか否かは文脈に依存するため、それについては文章の形からは断定できない。

まとめ(?)

きれいにまとまるか自信ないけど…

(1)動作動詞
肯定文否定文
不定詞・未来つかうつかわない
現在つかっているつかっていない
完了つかったつかっていない
過去つかったつかわなかった


(2)状態動詞(自動詞)
肯定文否定文
不定詞・現在つかっているつかっていない
過去つかっていたつかっていなかった
未来つかうようになるつかうようにならない
完了つかうようになった(まだ)つかわない / (まだ)つかっていない
※「いる」「いない」の「い」を省略することが多い。
※表組みとしてはむりやりだけど「〜ようになる」を使った例も載せた。

(3)状態動詞(他動詞)
肯定文否定文
不定詞・現在つかってあるつかってない
過去つかってあったつかってなかった
未来つかっておくつかっておかない
完了つかっておいた(まだ)つかってない
※元々の否定形が「ない」なので、「い」の省略ではない事に注意。
※表組みとしてはむりやりだけど「〜おく」を使った例も載せた。

(4)形容詞
肯定文否定文
不定詞・現在あついあつくない
過去あつかったあつくなかった
未来あつくなるあつくならない
完了あつくなった / あつくなっている(まだ)あつくない / あつくなっていない
※形容詞はもともとが状態を表す述語なので、状態動詞と似た感じになる。

(5)名詞
肯定文否定文
不定詞・現在猫だ猫じゃない
過去猫だった猫じゃなかった
未来猫になる猫にならない
完了猫になった猫になっていない
※形容詞と同じ感じ。
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