日本語の語尾「んだね」の使い方
「〜んだね」はそう使うんだね。
使い方は「〜ね。」と同じ。
ただの「ね」は基本的にひとつの事柄を指しているけど、「〜んだね」は今までに話して来た事全体を指しているんだね。
「んだね」の文例
- へぇ、それでこんなに散らかっているんだね。
- 遊びに行くってことは、宿題全部終わったんだね?
- ホラこわくない。ねっ…おびえていたんだね。でももうだいじょうぶ。
相手の話を聞いて「なるほど分かった」というような感じ。
アニメ版とは微妙に違うけど、3つ目の例文は「風の谷のナウシカ」第1巻のヤツ。
「〜んだよね」とも言うんだよね。
これはどこで切るかによって2通りの解釈があるんだよねー。
「〜んだ」と「〜よね」に切る場合は、これこれこういう事なんだと話した事について「よね」で相手に確認をする、という単純な組み合わせ。
「んだよね」の文例1
- じゃあ特に問題なかったんだよね。
- この文書で間違いないんだよね?
- ごめんね。わたしを守ろうとしたんだよね。
3つ目の例文は、風の谷のナウシカ第7巻から拾ってきた。
全体を通して、「だ」の用法を心得ている。
それに対して「〜んだよ」と「〜ね」に切る場合、「んだよ」の部分で話し手にとっては(一言で言えない)重要度の高い発言をする。
その次に助詞「ね」の持つニュアンスを利用して、矢印の先を相手にではなく、どこかイラストボードかお空の雲の上にでも逸らしている。
「んだよね」の文例2
- やっぱり上には上がいるんだよね。
- 結論として「上には上がいる」。わかった?しかし素晴らしい絵画だ。
- そうなんだよね。その話はすごいよく分かる。
- 事情はそういう事だ。わかった?しかし今日はいい天気だ。
- 緒花に思いっきり責められてさぁ、なんか思い出しちゃったんだよね。
- 実を言うと、思い出してしまったのだ。いやぁしかし…
ちなみに3つ目の例文はアニメ『花咲くいろは』主役の母親のセリフ。
超頻出語尾を使いこなそう
「よ」「ね」「んだ」の3つさえ使えるようになれば、日本語の語尾表現はほぼ習得できたと言ってもいい。
平叙文の文例
- 「もう始まってるよ。」
- 「もう始まってるね。」
- 「もう始まってるよね。」
- 「もう始まってるんだよ。」
- 自分はその事について色々と事情を知っていて、それを相手に教えようとしている
- 「もう始まってるんだね。」
- 自分はその事を知らなかったが、相手の話を聞いて分かった
- 「もう始まってるんだよね。」
- 自分(または相手)はその事について色々と事情を知っていて、相互理解を得ようとしている
次に、文法上は平叙文だけど語尾のイントネーションが疑問になっている例をあげる。
付加疑問の文例
- 「もう始まってるよ?」
- 相手はその事を知らないみたいなので、教えてあげている
- 「もう始まってるね?」
- 「もう始まってるよね?」
- 「もう始まってるんだよ?」
- 相手はその事を知らないみたいで、気づいてほしい理由があって教えてあげている
- 「もう始まってるんだね?」
- 「もう始まってるんだよね?」
- 自分はその話の内容を理解したが、念のため相手に確認している
平叙文で相手の注意を引く時は、ただ文末を高い音にするだけで良い。
これに対して疑問文の場合は、低い音から高い音に急上昇するようなイントネーションになる。
この中でも特に「〜んだね」「〜んですね」という表現は、相手や他人の意見を復唱する時にしか使わない。
単独の終助詞「〜ね」もあんまり自分事には向かないが、自分自身を客観的に見て「〜ね」を使う例はある。
それ以外は自分の意見を話す時にも使える。
その他
他には「〜んだな」「〜んだぞ」「〜んだぜ」「〜んだわ」という組み合わせパターンが存在する。
まあ、個別に項目を立てるほどでもないので、軽く紹介する程度で済ます。
「んだ」をつけることで今までに話して来た事全体を指す、という理屈は同じ。
【おまけ】終助詞の使い分け方のおさらい
ちょっとこの辺で、今までに出て来た語尾を比べてみよう。
男性諸君も女性諸君もみんな、これら全ての終助詞を覚えて使いこなせば、日本語の先生よりも上手にしゃべれるようになる。
まず初めに「相手に情報を伝える」という観点から使い分けを考える。
「よ」「わ」「ね」「な」「ぞ」の違い(1)
- じゃあ行ってくる!
- 主語がなければデフォルト1人称なので、「行く」のは話し手自身。
聞き手としては「じゃ、よろしく(Up to you)」と思えばいい。
- じゃあ行ってくるわ!
- 終助詞の無い場合とあまり変わらないが、「わ」を付けると「私自身が」という意思表示が強くなる。
- じゃあ行ってくるよ!
- 「よ」を使ってプスッと刺し、相手の注意を引いている。「承知しておいてほしい」という事である。
- じゃあ行ってくるね!
- その人がこれから出掛けるという事は、聞き手にとっては周知の事実である。
- じゃあ行ってくるな!
- 「独り言」もしくは「勝手に行かせてもらう」の意味なので、聞き手は特に反応なし(状況にもよるが)。
- じゃあ行ってくるぞ!
次は「私の感情を(相手の注意を引きたい訳でなく)おだやかに述べる」という観点から使い分けを考える。
「よ」「わ」「ね」「な」「ぞ」の違い(2)
- 着ていくなら水色の浴衣がいい。
- × 着ていくなら水色の浴衣がいいよ。
- 「よ」は「相手への忠告」の意味を伴う。単に感情を述べるだけの言葉としては余計。
- △ 着ていくなら水色の浴衣がいいわ。
- 本場のネイティブの耳には「〜わ。」は「決断」のニュアンスに聞こえるので、感嘆を表す物としては「これじゃない感」がある。
- × 着ていくなら水色の浴衣がいいね。
- 「ね」は必ず相手の意見も巻き込む。個人的な気持ちを述べるのなら、これは使わない。
- 着ていくなら水色の浴衣がいいな。
- 個人的な願望・感動を表す言葉としては百点満点。これは基本中の基本だから教科書でもキチンと教えろ。
- × 着ていくなら水色の浴衣がいいぞ。
- 「ぞ」は客観的に聞こえがちなので、あまり個人的な気持ちは表現できない。
次は、女子ソフトボール部での合宿の打ち合わせで、ひとこと発言する場面を考える。
「よ」「わ」「ね」「な」「ぞ」の違い(3)
- 遅くても8時集合だ。
- ただ自分の意見を言うだけなら特に終助詞は必要ない。
- 会話の名詞述語文では「体言止め」が主流だが、ここでは発言の終了を分かりやすくするための「だ」を付けた。
- 遅くても8時集合だよ。
- 遅くても8時集合だわ。
- 自分の判断を述べているが、メンバーの同意を得たり注意を引く意図は無い。
- 遅くても8時集合だね。
- 遅くても8時集合だな。
- 自分の思った事を率直に口に出している。単に感想を述べただけであり、受け取り方は各自の自由としている。
- 遅くても8時集合だぞ。
- 個人的な意見というわけでなく、状況を客観的に見て発言している。
翻訳者にしろ脚本家にしろ、何でもかんでも「〜わ。」で片付けすぎているので、あんまり言葉に深みがない。
日本語の感嘆表現は「〜な。」を使うのが基本だけど、けっこう忘れられてて困る。
もうひとつおまけに……
「行こう!」「行くよ!」「行くぞ!」「行くぜ!」の違い
行こう! は「動詞の語尾変化」で、単なる勧誘表現。
行くよ! はリーダー(話し手)が個々人に注意を促しているため、行かないと不都合があると思われる。
行くぞ! はリーダー(話し手)がその場にいる全員に対して呼びかけているが、個々人への注意という感じはないので、興味の無い人はたぶん行かない。
行くぜ! は多くの場合1人称複数のニュアンスがあり、全員で一斉に駆け出すイメージである。