終助詞「か」の使い方 / 日本語の語尾

疑問文とは限らないのか。

上がり口調の「か」は、言うまでもなく疑問文である。
逆に、下がり口調の「か」は……あっそうか、これは疑問が解けた時の言い方か。
タメグチの会話では、この「下がり口調」の「か」の方がはるかに重要なので、そこを優先して見ていく。

下がり口調の「か」の文例1


下がり口調の「か」は、他にも「とりあえず、やろう」の意味で使われる。
「何をしようかな」に対するひとつの答えが浮かんだ時の言葉。
英語で言うところの「How about...?」「Why not...?」「I guess I'll ...」「might as well」とか、それぐらいのニュアンスか?

下がり口調の「か」の文例2

「か」を用いたツッコミ用法

また、下がり口調の「か」は反語の意味で使うこともある。ツッコミに便利。
ツッコミ用法では、「動詞の原形+か」「名詞+か」という形しか存在しない(謎)。
「の」とか「ん」をつければ名詞化できるので、否定形・過去形・形容詞などでツッコみたい時は「〜のか」「〜んか」とすれば良い。

ツッコミ用法

「動詞の否定文+か」によるツッコミ命令

まず始めに「否定疑問文による勧誘表現」を思い出してください。
上がり口調の疑問文で人に何かを勧める「ちょっと落ち着かない?」は、日常でもよく使う言い回しだね。
これを下り口調で「落ち着かないかぁ!!」とすると、「いや、落ち着け(笑)」という反語的な命令表現になる。
なおかつ、ほとんどの場合は音便化して「落ち着かんかぁ!!」という形で用いられる。



ギャグ漫画を読み書きしたり、漫才をやる時なんかに便利な表現だけど、あくまでも漫才専用の言葉遣いだ。
日常会話の命令表現として普通に使うかというと……微妙。
絵でわかる日本語 というふざけたサイトでは「〜ないか」をあたかも男性が日常的に使うかのような書きぶりだけど、まあ、それは絶対に無い。
仮にも「女性は使わないように気をつけましょう」なんてことを言ったら、漫才から女性出演者が消えてしまうだろう?

終助詞「か」に関する注意事項

書き言葉と話し言葉で文法の違いが生じているため、少し注意深く見た方がいい。
(どちらが男性的か女性的かなんて、そんな幼稚なお話をしている余裕は無い)

書き言葉の場合

書き言葉の場合はまじめに「〜か?」を付けるのが原則。

丁寧語の場合

丁寧語の文法は少し不思議な所があって、形容詞述語文と名詞述語文の場合は「です」が間に入り込んでしまう。
実際の「ですます体」の会話では「〜か?」を省略する事も時々あるが、原則として「〜か?」を付ける事が望ましいとされている。

話し言葉の場合

実際の対話表現では…

このように口語体では、疑問詞が入る場合はどんな場合であっても「か」を付けず、疑問詞を含む名詞述語文では代わりに「〜だ?」を付ける。
実際のタメグチでは、上がり口調の疑問文の「〜だ?」「〜か?」は硬いイメージがあるらしく、普段の対話表現ではあんまり付けず「体言止め」にしてしまったり、イントネーションだけの事が多い。
場面に応じた利用傾向を丁寧に見ていく必要があるので「付けたらキツく聞こえる」みたいな解説を下手にすると、それも誤解のもとになるけどね…
(「〜だ?」「〜か?」を伴う事が多いのはモノローグのような発言)
ただし間接話法には書き言葉と同じ規則が適用されるので、「〜かと聞かれる」というように必ず「か」を付けないといけない。
(この辺は韓国語の「〜습니까?」「〜냐고,」と似ている)

「か」を付けるか付けないか

名詞句として

「〜だけ」「〜まで」など一部の副助詞と同じように、次のような文章を作ることができる。

その他の「〜か。」

ある種の構文では「〜か分からない。」の省略を意味することがある。
したがってニュアンスは間接話法になる。
「AかBか」という選択疑問文も実際は間接話法であることが多い。

疑問詞を含む「〜のか」「〜んだか」

仮定法過去を含む「〜か」

選択疑問文 + 間接話法

「ものか」という語尾表現について

参考: Superfly『フレア』
NHK朝ドラ『スカーレット』主題歌の最後の所に、反語としての「〜もんか」を使った表現があり、これはちょうどいい文例だなあと思った。
「絶対あんな親になるもんか」母親が大嫌いだった私が、親になって知ったこと
これなんか身近でイメージしやすい良い例文だよね。
進撃の巨人の「タダで死んでなるものか!」もいいけどね。

日本語学習系のブログでN1だのN2だのという記号と一緒に「ものか」を紹介する人が多いけど、これは要するに、試験問題で出題されるという事なのだよね…。
日常会話でそんなに使うわけではないが、日記や小説で使う機会はあるだろうから覚えておいて損は無い。
「ものか」をひとかたまりの終助詞みたいに言う人がいて困るんだけど、これはただのidiomだから「もん」と「か」を別々に区切って考えなきゃいけない。
「もん」自体は蓋然性を高めるパーツにすぎないので、終助詞「か」自体の用法をきちんと確かめるのが大事。
「うーん…はたして、そう思い通りにいくもんか…」と言った時は、別に反語ではなくただの疑問文だからね。

困るのは、男性は「〜もんか」女性は「〜もんですか」を使うとかいう変な説明をネットに挙げるヤツがいて…
私から見たらね、ハッキリ物言う女を嫌うsexistなんだなと分かるけどねぇ…
学習者から見たら文法上のルールと混同する恐れがあるので、そういうのは教育目的としては危なっかしくて使えないコンテンツなんだよね。

我々が言葉をしゃべる時に、いちいち自分の性別なんか意識してないじゃん?
本当に性別のルールに束縛されてたら、この漫画のロックマンが「死ぬもんですか」なんて言うわけないじゃんね?

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